歩いて行ける範囲の地域に住んでいました。
佐久間さんは高級住宅街の端。わたしたちはふつう住宅街の端。
交通量の多い大きな通りをはさんでいました。
佐久間さんが長い間一緒に暮らしていた女性と別れた後に
失意の佐久間さんを訪れたことがあります。
佐久間さんは当時、衝動買いしたファルコンという大きな犬を
育てていました。もちろん衝動買いしたのは子犬の時です。
大きい佐久間さんと巨大な白い犬の二人暮らし。
なんだか寂しそう。
グリルでお肉を焼く佐久間さんに
「佐久間さんも料理できるんだ~」と驚くと
「そうだよ、しょっちゅう彼女が外国行ってる人だったから自分でできないと」というようなこと言ってました。
壁に貼ってある何枚かの写真のうちの彼女の写真を見て、
「それ、かわいいでしょ」とか言う佐久間さん。
わたしは、なんだか元気のないまだ未練のある感じ醸し出す佐久間さん
を元気づけるためにも
と
なんだかハイ・テンションになり
ファルコンとこんなに遊んだことないというくらい
かけまわりました。(あくまで家の中で)
巨大な犬なので、なんだか興奮度合いもすごくて
怪我しないようにけっこう必死でした。
その後、佐久間さんは
寂しいどころか新しい彼女と結婚し
まもなく転居してしまいました。
わたしは、その時「あの、わたしの元気出せのがんばりはなんだったの?
馬鹿じゃない?」と思いました。
そして、たぶんそれからわたしは、無理ながんばりはやめたような気がします。
「わたしの浅い同情のこころよ、さようなら」です。
深いところからの真の行為は後悔することはないですからね。
佐久間さん、ありがとう!
(ございます。)
つづくかも
ちびファルコンが遊んでいるのはわたしのバッグ 11/APRIL/'86 |