2009年11月29日日曜日

新潟の映画『白痴』展 (11/16~20) に寄せて

 私はサヨを演じた甲田益也子です。とても魅力的なポスター撮り、それに先立っての眉剃り、そしてクランクイン寸前の髪の毛の黒への染めと大作にむかってテンションがあがっていたのを憶えています。
 制作の10年前に手塚さんよりお誘いがあり、その後、実現しない様子を見て半ばホッとしていたような気もします。何故って、あんまり大きな役すぎて私にできるのか?という不安があったからですね。
 当時、ロケバスで一緒になった共演の伊武さんから実際の年齢より10歳若く見られていたのを知りました。私にとっては企画当初の10年前ではなくあの年齢でこそできた仕事であり、それを引き受けてよかったと思っています。今、あのテンションにもっていけるかというとその自信はありません。手塚さんの熱意がなかったらできなかったでしょう。私よりも私を信頼下さって、ありがとうございました。

 

 この映画では、今に至るまで続くいい出会いもありましたし、葛藤もあり、まるで撮影が人生の旅のようでした。
 その後も、ヴェネチア、釜山と映画祭にも招かれ、映画は作った時だけでなくずっと、そうです、今になってもこのように呼ばれるのですから、どれだけのエネルギーが注がれてできているかがうかがえますね。
 その時、その場でしかできない事があります。そして、それを今、また共有できるのですね。面白いです。

 

 また、どこかでお会いできたら嬉しいです。(新潟・市民映画館 シネ・ウィンド ロビーにて展示したもの)

 

2009年11月20日金曜日

買い物客から賞賛あびる

 前回の日暮里の生地屋さんでのこと。選んだ生地をレジに持っていき、欲しい長さ分をカットしてもらっていると、居合わせた一人の年配の女性のお客さんから「いいわ~。なんとも言えない上品な色ね~。」と目を細め、ほめられました。微妙な色だったのでそのよさを思いがけず共有できあたたかい気持ちになりました。

 実は、店内でその場のお客さんにほめられた事が過去にも一度あります。場所はアメリカ、ニューヨークの上のウッドストック。日本で言えば軽井沢、那須のようなところでしょうか。ろうそく+ろうそく立てのお店にて、私の選んだアイスブルー系の色のガラスのろうそく立てとろうそくの組み合わせがお店にいた観光客の人達の喝采を浴びたことがありました。美しい色合いのろうそく立てに同系の色の細長い非日常的なろうそくの組み合わせでした。お店の人も周りの人もブラボー!レベルの褒めようで、自分が作ったのでもないのに、嬉しく興奮気味にお店を出たことをおぼえています。
 が、ホテルに帰り早速サイドボードに左右対称に飾り、満足気に火を灯していたところ間もなく異変が、、、。買った二本のうち一本のガラスのろうそく立てが音をたてすぐに割れてしまいました。ろうそく立てなのに~。
美しさと実用性が両立していないのをまざまざと見せられ、自分の選択眼のなさが露呈したのでした。
 残った一本のガラスのろうそく立てですが、今もポツンとろうそくをたてられることもなく立っています。今度またお似合いのろうそくを見つけましょう。

2009年11月10日火曜日

シルクと格闘

格闘している時点で負けていると言えるのですが
ただいま私は日暮里繊維街で見つけてきたシルクで
あるものを作っているところなんです。

この同じドレスを作るのは4回目で、はじめてちゃんと型紙から作ってみました。
それまでは、小さいデザイン画の寸法を見ながら、じかに生地にしるしをつけ
ざっくりと裁断し、縫製してきたのですが、いつもおかしなことになっていたので
(たとえばAラインのはずが弓なりになっている)いよいよ型紙からおこしてみようと思いたったのです。

パターンをひく紙の捜索からはじめ、ようやく切り貼りして多少でこぼこの不格好な型紙を作り、生地にあわせました。
このシルクが悲しいかな軽くやわらかく(本来はいいのですが)二つに折っても思うように端が一直線に重ならないのです。
はじめて型紙を作って気づいたことは、直線の世界から始まるということです。一方、生地は波打ち有機的。
いつも動いていてとらえどころなく数字合わせが困難。しるしもつけにくいし、裁断も難しい。
しかも、私の指先は人生最大に荒れていてガサガサ。生地がひっかかり、その度にずれるのです。
最初のズレを最小限にしておかないと、どんどん後から取り返しがつかなくなるので焦ります。
まさに格闘(=負けている)。

そして、数日が経過

あそこをしくじり、ここをごまかし、これで間に合わせ、、、と、なんとか
完成させ期日までに間に合い、しかも意外に評判がよく満足しています。
四度目にしてはさほどの上達はなく、しかも細かいものが見えにくくなっているので
厳密な意味での完成度は低いかもしれません。型紙の効果は弓なりが直線に
近づいたという程度のものでした。つまり型紙を生かしきれていない、、、。
ただ、生地の持つ色、風合いが優雅な気配を演出してくれるのです。

こういったことにはーシルクでドレス(といっても裏地のついたふつうのドレスではなく、
生地を二つに折って真ん中に首が入る穴を開けた簡単なもの)を作るー
下手なだけに、完成までに学ぶ事は多いのです。映画出演もそういった学びはありましたが、
そこかしこに教訓が隠れているのです。不思議ですが、そんなことに気づく一連の手作りタイムです。

いつかその雰囲気を皆さんの前にチラリとでも見せられたらと思っていますよ。