私はサヨを演じた甲田益也子です。とても魅力的なポスター撮り、それに先立っての眉剃り、そしてクランクイン寸前の髪の毛の黒への染めと大作にむかってテンションがあがっていたのを憶えています。
制作の10年前に手塚さんよりお誘いがあり、その後、実現しない様子を見て半ばホッとしていたような気もします。何故って、あんまり大きな役すぎて私にできるのか?という不安があったからですね。
当時、ロケバスで一緒になった共演の伊武さんから実際の年齢より10歳若く見られていたのを知りました。私にとっては企画当初の10年前ではなくあの年齢でこそできた仕事であり、それを引き受けてよかったと思っています。今、あのテンションにもっていけるかというとその自信はありません。手塚さんの熱意がなかったらできなかったでしょう。私よりも私を信頼下さって、ありがとうございました。
この映画では、今に至るまで続くいい出会いもありましたし、葛藤もあり、まるで撮影が人生の旅のようでした。
その後も、ヴェネチア、釜山と映画祭にも招かれ、映画は作った時だけでなくずっと、そうです、今になってもこのように呼ばれるのですから、どれだけのエネルギーが注がれてできているかがうかがえますね。
その時、その場でしかできない事があります。そして、それを今、また共有できるのですね。面白いです。
また、どこかでお会いできたら嬉しいです。(新潟・市民映画館 シネ・ウィンド ロビーにて展示したもの)